靖国神社「南門」と狛犬など
読み方
- やすくにじんじゃ みなみもん
建築様式(造り)
- 切妻造、銅版葺
- 三間三戸
靖国神社「南門」の建築様式(造り)と見どころ
靖国神社には、神門、南門、北門と3つの門がありますが、このうち北門はゲートがあるだけですので、建造物としての門は神門と南門のみです。
南門は神門よりも小さく、簡易的な造りとなっています。
柱と扉
神門は奥行方向に3本の柱があり、真ん中の柱に扉が付いていますが、南門の柱は前後2本の柱のみです。
また、両方、「三間三戸」と言って、柱間が3つあり、そのすべてに扉が付いているという点では共通していますが、神門は3か所すべての扉が両開きであるのに対し、南門の左右の扉は片開きとなっています。
屋根
南門の屋根は本を半開きにして伏せたような形の切妻屋根で、天井は木組みが露出しています。
神門には千木が乗っていますが、南門にはありません。
菊の御紋章
南門の扉には、菊の御紋章が付いています。
神門にも付いていますが、神門のものは金色の飾りであるのに対し、こちらは透かしとなっています。
ただ、門が空いている時間は透かしの向こう側に隣の扉があるので、せっかくの透かし模様が生かされません。
南門が本当に美しく見えるのは、門が閉じている時と言えるかもしれません。
機会があれば、朝6時の開門時間前、あるいは、夕方(季節により17時または18時)の閉門時間後、しかもあまり暗くない時間帯に、閉ざされた南門の菊の透かしから、境内の桜や新緑、紅葉を覗いてみてください。
南門の狛犬
南門前にある一対の狛犬は、1963年(昭和38年)に奉納されたもので、靖国神社の境内の中で唯一の青銅製です。
向かって右は口を開いた像(阿形)で、向かって左はて口を閉じた像(吽形)となっており、吽形の方には角があります。
狛犬を阿形・吽形で表すのは仏教の仁王像が影響していると考えられ、一般的にはこのように、右に阿形、左に吽形が配されます。
「護国神社系」狛犬
靖国神社のように、英霊を祀る神社を護国神社と言いますが、この護国神社によくある狛犬を「護国神社系」と分類することがあります。
胸を張り、堂々とした風格あるたたずまいで、いかつい顔をしているのが特徴で、さらにいくつかの型に分けて区別されます。
その中でも南門前の狛犬は、大宝神社(だいほうじんじゃ)型と呼ばれる、滋賀県栗東市の同神社の狛犬をモデルとする狛犬です。
体はスマートで、厚い胸板と立派なたてがみをが特徴です。
狛犬の左右の形の違いについて
かつて、古代オリエントで生まれた獅子像が、インドを経由して中国に伝わりました。
その獅子像を遣唐使が日本に持ち帰ったものが、現在日本全国の神社で見られる狛犬の起源とされています。
2体の獅子像は、日本に持ち込まれた後、「獅子」と、日本で生まれた「狛犬」というペアに変わっていきました。
諸説ありますが、平安時代中にはこの獅子と狛犬の組み合わせが主流になっていたようです。
この場合、向かって右が口を開き角を持たない獅子で、向かって左が口を閉じ角を持つ狛犬です。
つまり、靖国神社南門前や第一鳥居前にある狛犬は、この平安時代以降の狛犬(獅子と狛犬)の一般的な姿をしているというわけです。
しかし、時代が進むにつれて獅子と狛犬の区別があいまいになり、呼び方も単に「狛犬」となりました。
容姿は、角のない「獅子」のみのペアのことも多く、また、立ち方(座り方)の違いなどで獅子と狛犬を独自に区別している神社もあります。
南門の手水舎
南門をくぐったところにある手水舎は、1923年(大正12年)9月1日の関東大震災の時、境内に避難して助かった周辺住民が、震災の1年後に奉納したものです。
靖国神社は、震災当時、境内と外苑を避難民のために開放していたのです。
なお、この手水舎と共に、南門の鳥居も奉納されましたが、1945年(昭和20年)5月のの空襲で焼失してしましました。
神道無念流道場跡
南門付近には、「神道無念流道場跡」と記された石碑が建っています。
靖国神社創建前、この地は神道無念流の剣術道場「練兵館(れんぺいかん)」でした。
練兵館は、剣術家・斎藤弥九郎(さいとうやくろう)が創始し、後に幕末江戸三大道場の1つに数えられました。
門下生の中には、長州藩から剣術修行のために19歳で江戸留学した木戸孝允(桂小五郎)がいます。
ちなみに、剣術に優れていた木戸孝允は免許皆伝を得て、入門1年で塾頭となっています。
靖国神社「南門」の場所
南門は、市ヶ谷方面から訪れる場合に最も近い入口です。
南門を入ってまっすぐ行くと、左手に拝殿への入口となる中門鳥居が現れます。
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