靖国神社「石鳥居」と狛犬

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靖国神社「石鳥居」と狛犬

読み方

  • いしとりい

※「石鳥居」で「いしどりい」と読ませている神社もありますが、靖国神社では「いしとりい」となっています。

造営年

  • 1933年(昭和8年)
建築様式(造り)・材質

  • 靖国鳥居、石造り
大きさ

  • 高さ:39尺4寸(約11.9m)
  • 両柱間:23尺8寸(約7.2m)
  • 柱直径:約1.2m
  • 重量:約50t

靖国神社「石鳥居」の歴史・由来

靖国神社の駐車場入口にある石鳥居は、1933年(昭和8年)、片倉財閥の2代目片倉兼太郞(かたくらかねたろう)により奉納されました。

当時、岡山県議会の鶴田簑輔議員が、自身が所有する鳥居用の花崗岩(かこうがん)を靖国神社に献納したいと思っていましたが、資金が足りず実行に移せないでいたところ、長野県の片倉兼太郞が資金援助を申し出、1932年(昭和7年)、前年の満州事変記念として、大鳥居と狛犬が製造・奉納されることに決まりました。

鳥居と狛犬の設計は、1924年(大正13年)の靖国神社の大改修の指揮者の1人であり、遊就館や神門の設計も行った建築家・伊東忠太が担当しました。

片倉兼太郞について

片倉兼太郞は、当時日本最大の製糸企業だった「片倉工業(旧片倉製糸紡績)」を創業した片倉家(片倉財閥)の2代目です。
片倉財閥は、現在世界文化遺産に登録されている富岡工場(旧富岡製糸場)の経営を、閉業前の約50年間担ったことでも知られています。
片倉兼太郎の名は初代から3代目まで引き継がれました。
なお、狛犬の台座には、兼太郞の名前ではなく、一族という意味の「同族」を添えて「奉獻(奉献) 昭和八年三月 片倉同族」と記されています。




靖国神社「石鳥居」の特徴と見どころ

最大級の「北木石製」石鳥居

靖国神社の石鳥居は、石造のものとしては高さ約9.5mの京都・八坂神社の石鳥居に並ぶ、国内最大級の鳥居です。

(※八坂神社の石鳥居は、日光の日光東照宮の石鳥居、鎌倉の鶴岡八幡宮の石鳥居(一ノ鳥居)と共に、日本三大石鳥居の1つに数えられています。)

素材となった石は、岡山の「北木石(きたぎいし)」という花崗岩で、瀬戸内海から東京まで、船で運ばれてきました。

鳥居をよく見ると、笠木、貫、2本の柱に継ぎ目はなく、この大きさのまま採掘・加工されて運ばれたことがわかります。

美しい光沢があり、加工しやすい「粘り」を持つ北木石は、多くの有名な建造物や偉人の墓石に使用されています。

例えば、日本銀行本店本館、三越本店、JR原宿駅前の参宮橋、薬師寺西塔、新しいところでは2012年(平成24年)に復元・保存工事が終了した東京駅丸の内駅舎にも、この北木石が使用されています。

東京駅丸の内駅舎

靖国神社では、石鳥居とその前の狛犬、そして大村益次郎像の台座が北木石製です。

大村益次郎像

靖国鳥居とは?

靖国鳥居は、靖国神社の第一鳥居(大鳥居)に代表される様式の鳥居です。

笠木(かさぎ)に「反増(そりまし)」と呼ばれる湾曲がない「神明鳥居(しんめいとりい)」の一種で、主に以下のような特徴があります。

靖国鳥居の特徴

  • 笠木に反増がない
  • 額束(がくづか・額柄)がない
  • 貫(ぬき)が柱の外側に出ない
  • 笠木の断面は円形、貫の断面は長方形

第一鳥居と見比べてみてください。

素材は違いますが、どちらも靖国鳥居の代表的な特徴を備えています。

靖国神社の第一鳥居(大鳥居)




靖国神社「石鳥居」前の狛犬

前述の通り、石鳥居前の狛犬のデザインは、石鳥居と同じく伊東忠太が担当しました。

清(中国)から持ち込まれた中国獅子1対を除いた、靖国神社にある国産の狛犬3対の中では、最も古い狛犬です。

向かって右の狛犬
向かって左の狛犬

靖国神社のその他の狛犬については、当サイトの以下のページ↓でご紹介しています。

 靖国神社「第一鳥居(大鳥居)」と狛犬など
 靖国神社「南門」と狛犬など

なお、この石鳥居前の狛犬は、原型を高村光太郎が作ったとも伝えられています。

「護国神社系」狛犬

靖国神社を始めとする全国の護国神社でよく見られる狛犬を、「護国神社系」と分類する場合があります。

胸を張り、堂々とした風格あるたたずまいで、いかつい顔をしているのが特徴で、さらにいくつかの型に分けられますが、靖国神社の石鳥居前の狛犬は、「弥彦神社型」に分類されます。

弥彦神社型の狛犬は、弥彦神社(新潟県西蒲原郡弥彦村)が大正時代に再建された際、伊東忠太がデザインして奉納された狛犬をモデルとする狛犬です。

弥彦神社の「弥彦神社型」狛犬

胸板が非常に厚く、背筋をピンと伸ばし、小さく作られた頭を高く掲げ、凛々しい表情を正面に向けているのが特徴です。

正面からの見た目は瓜二つですが、後ろ姿を見ると、靖国神社の狛犬は、狛犬にはよくあるふさふさした尻尾ではなく、ひょろりとした尻尾が個性的な作品となっています。

後ろ姿にもご注目を!
 狛犬の左右の形の違いについて

かつて、古代オリエントで生まれた獅子像が、インドを経由して中国に伝わりました。

その獅子像を遣唐使が日本に持ち帰ったものが、現在日本全国の神社で見られる狛犬の起源とされています。

2体の獅子像は、日本に持ち込まれた後、「獅子」と、日本で生まれた「狛犬」というペアに変わっていきました。

諸説ありますが、平安時代中にはこの獅子と狛犬の組み合わせが主流になっていたようです。

この場合、向かって右が口を開き角を持たない獅子で、向かって左が口を閉じ角を持つ狛犬です。

しかし、時代が進むにつれて獅子と狛犬の区別があいまいになり、呼び方も単に「狛犬」となりました。

容姿は、角のない「獅子」のみのペアのことも多く、また、立ち方(座り方)の違いなどで獅子と狛犬を独自に区別している神社もあります。

靖国神社では、第一鳥居前南門前にある狛犬は、右側が角のない阿形の「獅子」で、左側が角を持つ吽形の「狛犬」という、平安時代以降の一般的な組み合わせとなっていますが、石鳥居前の狛犬は、阿形と吽形の配置が反対で、どちらも角を持っていません。

靖国神社「石鳥居」」の場所

石鳥居は、靖国通り沿い、靖国神社境内の駐車場入口にあります。

公共交通機関を利用して靖国神社を訪れる場合はあまり目に入らない場所ですが、ぜひ、ご注目ください。

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