靖国神社「霊璽簿奉安殿」
読み方
- れいじぼ ほうあんでん
造営年
- 1972年(昭和47年)
建築様式(造り)
- 神明造
- 鉄筋コンクリート造
※内部は桧造
屋根の造り
- 切妻造
- 銅板葺
※霊璽簿奉安殿は、一般に公開されていません。当ページの霊璽簿奉安殿の写真は、靖国神社ホームページからお借りしたものです。
霊璽簿奉安殿の歴史・由来
霊璽簿奉安殿は、御霊を合祀する際に用いる霊璽簿を保管するための建物です。
1972年(昭和47年)、昭和天皇から賜った御内帑金(ごないどきん:お手元金)により建造されました。
2018年(平成3年)には、2019年(令和元年)の靖国神社創立150年記念事業の一環として、劣化した建物外部のモルタル部分や金物類の補修工事や建物全体の防水塗装が行われました。
霊璽簿とは
霊璽は霊代(たましろ・れいだい)とも言い、死者や神の霊の依り代として、あるいは印として祀るもののことです。
依り代とは、神が霊験を表すために宿る樹木や岩、その他の物のことを言います。
靖国神社には国内外の戦争などで命を落とした人の御霊を英霊と呼び、祭神として祀っています。
その数は2百46万6千あまりですが、祀っていると言っても、位牌や遺骨があるわけではありません。
靖国神社に祭神として祀られる英霊1柱1柱の依り代であり、証ともなるものが、霊璽簿です。
奉安殿に納められている霊璽簿には、合祀される御霊のお名前が記された和紙の名簿が綴じられています。
2百46万6千人(柱)の名簿ということで、霊璽簿はなんと約2000冊あり、50領の唐櫃(からびつ・からと)に入れられています。
なお、祭神名は、生前の氏名の最後に「命(みこと)」または「媛命(ひめのみこと)」を付したものとなります。
靖国神社の霊璽奉安祭(合祀祭)
霊璽奉安祭とは
日本国憲法下、日本では戦死者は出ないはずなので、靖国神社に新たに祀られる御霊はないように思われますが、実は、祭神の数は、毎年少しずつ増えています。
なぜでしょうか?
終戦後まもない1945年(昭和20年)11月、満州事変から太平洋戦争にかけて出征し帰国しなかった陸海軍人を、まとめて仮にお祀りするための、臨時大招魂祭が行われました。
この際に、名前や所属が明らかになっていない、また、本当に亡くなったかどうかの確認が取れていない軍人たちが、氏名不詳のまま招魂され、本殿の相殿(あいどの)に、仮に祀られました。
GHQの統制下で、靖国神社の存続自体が危ぶまれる状況でしたが、将来、できるのであれば、身元が判明した人から霊璽奉安祭(合祀祭)を行い内陣(正床)にお移しして、晴れて祭神(英霊)として祀ろうという計画だったわけです。
臨時大招魂祭には当時の陸海軍大臣や幣原喜重郎(しではらきじゅうろう)総理大臣も参列し、天皇陛下も行幸されました。
その後、市町村や都道府県、靖国神社の臨時調査部などにより本格的な調査が進められ、約200万人の戦没者が合祀され、太平洋戦争までの戦没者の合祀は、昭和34年の臨時大祭までに、大体、終了しました。
それでもなお身元不明のままの戦没者の調査は各所で続けられ、現在でも、毎年、新たに身元が判明して本殿内陣に祀られる英霊がいくらかあるのです。
このように、新たに身元が判明した戦没者を合祀するための儀式が、霊璽奉安祭です。
霊璽奉安祭の日程と流れ
霊璽奉安祭の実施日・時間
- 10月17日、19時から
※秋季例大祭初日(当日祭前夜)
霊璽奉安祭は10月17日夜の暗闇の中、行われます。
例年、戦没者遺族など関係者、靖國神社崇敬奉賛会など関係団体が本殿や拝殿で参列します。
霊璽奉安祭終了まで境内の門は開いているので、一般の人も拝殿前から様子をうかがうことはできますが、人はまばらです。
霊璽奉安祭の流れ
霊璽奉安祭は19時から1時間あまりかけて行われます。
まず、本殿の相殿が開けられ、仮に祀られた御霊の名前などが霊璽簿に記された後、その御霊が内陣に移されます。
途中、霊璽簿に記された新たな御霊を内陣に祀って御霊を祭神(英霊)とするという最も重要な場面になると、境内および本殿・拝殿のすべての照明が落とされて真っ暗になります。
上掲の写真では、参道にかがり火が焚かれ、拝殿にも明かりが灯っていますが、これらが消されて、本当に真っ暗になるので、参列していても、何が行われているのかはわからないと言います。
その後、神饌(しんせん:神に供える酒や食事)が供えられるなどして、霊璽奉安祭が終わります。
なお、霊璽奉安祭の際は、神楽笛などの他、國學院大學吹奏楽部が奏楽を担当しています。
霊璽簿奉安殿の建築様式(造り)霊璽簿奉安殿は本殿の真後ろにあり、背後は木々に囲まれ立ち入り禁止エリアとなっているため、一般の参拝者が見ることはできません。
祭神の依り代である霊璽簿を納める大切な建物ですので、耐震・耐火・防湿に万全の設計である上、不測の事態に備えて仮神座も設けられています。
本殿と同じ神明造の建物で、本を半開きにして伏せたような形状の切妻屋根、屋根の勾配がある側(軒と平行な面)に建物の入口がある「平入り」、高床式などの特徴を持っています。
また、屋根には本殿と同じく千木と鰹木が乗っています。
本殿と霊璽簿奉安殿の建築様式「神明造」については、当サイト靖国神社「本殿」も併せてご覧ください。
霊璽簿奉安殿の場所
霊璽簿奉安殿は、本殿の真後ろにあります。
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