靖国神社「靖國会館(休憩所)」・「靖國偕行文庫(図書館)」
読み方
- やすくにかいかん・やすくにかいこうぶんこ
造営年
- 1934年(昭和9年)
※靖國偕行文庫は1999年(平成11年)に増設
設計者
- 陸軍省 ※設計顧問:伊東忠太
靖國会館の歴史(由来)
靖國会館は、陸軍省により、国民への軍事知識普及のためという目的で、遊就館の付属施設として建てられました。
戦前は「國防館」と呼ばれ、近代戦のジオラマや兵器などが公開され、室内射撃場や爆撃機のシミュレーター(搭乗体験室)、ニュース映画を上映する講堂などが備わっていました。
戦後は名称を靖國会館とし、内部には休憩所が用意されている他、1階には靖國偕行文庫(図書館)、2階には講演会や講習会、直会(なおらい)などが開かれる貸室があります。
2017年(平成29年)2月には、靖国神社創建150周年記念事業として行われていた、内装を中心とする改修工事が完了しています。
カーペットや壁紙が張り替えられ、トイレも新しくなりました。
靖國会館の建物の特徴・見どころ
靖國会館は、隣にある遊就館と同じく、建築家の伊東忠太を設計顧問に迎えて建築されています。
1階の部分は遊就館旧館(本館)と同じ石貼りで、まるで石垣のようなおもむきになっており、2階部分は白壁となっています。
2階中央部分には、城の天守閣ややぐらなどに見られる、中から屋を射るための矢狭間(やざま)のような窓が開けられています。
神社建築と調和する銅板葺の屋根ではありますが、城門のような堂々とした、風格漂う外観の建物です。
入口手前の両側に鎮座するしゃちほこは、1985年(昭和60年)に前橋陸軍予備士官学校・相馬原会から奉納されたものです。
同会は、遊就館旧館(本館)前と新館前にもしゃちほこを奉納しています。
なお、靖國会館は、靖国神社の本殿、拝殿、遊就館などと共に、「千代田区景観まちづくり重要物件」に指定されています。
靖國会館の入口
入口の頭上には、書家・松本芳翠(まつもとほうすい)筆の「靖國会館」の文字が見えます。
靖國会館内部
入口から中に入ると、明治天皇御製の「鏡」と題された歌の額などが展示されている玄関フロアがあります。
靖國会館は休憩所としても利用可能!
靖国神社の境内は広く、第二鳥居手前の参道脇や靖國会館前に休憩所がありますが、実は、靖國会館1階にも、休憩スペースが設けられています。
内部には無料でいただけるお茶などのドリンクも用意されており、知る人ぞ知る穴場の休憩所となっています。
靖国神社の図書館「靖國偕行文庫」
図書館「靖國偕行文庫」開館の経緯
靖國偕行文庫は、1999年(平成11年)に、靖国神社の創立130周年を記念して、靖國会館1階に開館しました。
靖国神社に祀られる御祭神(戦没者)が亡くなった時の状況の調査資料を多数有し、戦没者の御遺徳を顕彰すると共に、日本近代史に関する研究に役立てることを目的に設置されました。
名称は、建物と蔵書を奉納した財団法人偕行社(かいこうしゃ)に由来しています。
靖國会館に靖國偕行文庫を増設するにあたっては、約5億円の経費を偕行社が負担しました。
また、開館にあたっては、3万5370冊の蔵書が偕行社より寄贈されました。
偕行社とは
偕行社は、旧日本陸軍の将校たちの社交、互助、学術研究の場として、1877年(明治10年)に設立された団体です。
終戦により一時解散しましたが、戦後1952年(昭和27年)には旧軍人の親睦会として再発足し、現在は陸上自衛隊関係者も入会しています。
なお、旧日本海軍の同種の団体に水交会があり、靖國偕行文庫では水交会が寄贈した書籍も所蔵しています。
図書館「靖國偕行文庫」の蔵書数と種類(ジャンル)
靖國偕行文庫(図書館)の蔵書は、偕行社から寄贈されたものと靖国神社の蔵書を合わせて、開館当初は5万冊あまりでしたが、その後購入したものや、戦友会や戦没者遺族から寄贈されたものもあり、現在、その数は併せて約13万冊に上っています。
蔵書は主に、国防・軍事関係や歴史、思想(神道)関係の図書・資料です。
市販されていない大変貴重なものも多くあり、特に日本の近代軍事史に関する資料は、国会図書館に次ぐ蔵書数だといいます。
靖國偕行文庫の蔵書の種類(ジャンル)
- 旧日本軍の戦史・戦記・部隊史・教程・教範・専門雑誌・訓練参考資料など
- 軍事と関係する政治・外交・諸制度関連
- 戦没者(英霊)の追悼録・回想録
- 神道など思想・宗教関連
- 東京裁判関連
- 自衛隊関連書籍・雑誌
※英語の文献もあります
図書館「靖國偕行文庫」の開館時間・休館日
開館時間
- 9時~16時30分 ※閲覧・複写申込は16時まで
休館日
- 月曜日・木曜日 ※祝日の場合は翌日休館
- 年末の3~4日間
- この他臨時休館日あり
※靖国神社・靖國偕行文庫のホームページから休館日スケジュールをご確認ください。
図書館「靖國偕行文庫」の利用方法
図書・資料の閲覧
靖國偕行文庫は、閲覧室に並んでいる一部の書籍以外は、書棚が閲覧者に公開されていない閉架式図書館です。
そのため、読みたい本・資料を手に取るには、まず蔵書を検索し、閲覧申込用紙に記入して職員の方に申し出る必要があります。
- 蔵書検索方法:
館内のパソコンまたは蔵書目録から探します。靖国神社ホームページからでも検索できます。 - 一度に閲覧できる図書・資料の数:3冊以内
※貴重な資料などの閲覧に際しては、身分証明が必要になる場合があります。念のため、運転免許証や社員証などをお持ちください。
図書・資料の複写(コピー)
靖國偕行文庫の蔵書に限り、館内でコピーができます。
所定の複写申込書に必要事項を記入し、職員の方に申し出てください。
- 複写(コピー)料金
【白黒】A3まで:1枚20円
【カラー】B5・A4:1枚50円、B4・A3:1枚80円 - 複写(コピー)可能枚数:1人1日最大200枚まで ※職員の方にコピーしていただくため
※図書・資料保護のため、劣化などの理由でコピーできないものもあります。
※デジタルカメラなどによる撮影に関しては、職員の方にご相談ください。
図書・資料の貸出
靖國偕行文庫では、靖國神社崇敬奉賛会、および偕行社の会員に限り、図書・資料の貸出しを行っています。
該当する方は、会員証を提示し、所定の貸出申込書を記入して申し込んでください。
- 貸出冊数:3冊まで
- 貸出期限:2週間まで
※図書・資料保護のため、貴重な資料については、閲覧室での利用が原則となっています。
資料調査(レファレンス)
靖国神社に英霊として祀られている戦没者の戦没状況の調査や、戦死されたご親族の所属部隊に関する調査などについては、職員の方にご相談ください。
図書・史料の奉納(寄贈)
神道、国防、軍事関係の図書・資料を奉納(寄贈)したいとお考えの方は、事前にお電話でご相談ください。
- 電話番号(靖国神社文庫室):03-3261-8041
その他、利用上の注意など
閲覧室内では、以下のような行為は禁止されています。
- 図書・資料の閲覧室外への持出し
- 喫煙、飲食、携帯電話などの使用
- ペットの連れ込み
- 図書・資料閲覧目的以外の利用(休憩、待ち合わせなど)
- 雑談など、他の閲覧者に迷惑となる行為
- 筆記用具など必要なものや貴重品以外の持ち込み
※手荷物は、室内のコインロッカーに預けられます。使用には100円硬貨が必要ですが、使用後に返却されます。
【補足】靖國偕行文庫の前身、靖国神社の「奉納図書館」
実は、靖国神社には、靖國偕行文庫の開館以前にも、図書館が存在していました。
明治維新の功績を記念して1910年(明治43年)7月に開館した「奉納図書館」です。
1902年(明治35年)12月の林友幸(はやしともゆき)子爵が、海軍大臣・山本権兵衛と陸軍大臣・寺内正毅にあてて提出した「靖国神社へ図書館奉納願書」に図書館開設の計画が記され、明治維新の資料、戊辰戦争の戦記、公偉績画巻(日清戦争記念画集)などの書物や、物品約500種を収蔵し、「建設費3万円、備品費2万円」とされていました。
その後、この提案は陸海軍と靖国神社に承認され、遊就館の隣に図書館が建設される運びとなりました。
林友幸が1907年(明治40年)に亡くなった後、資金面などで問題があり、計画を縮小せざるを得なくなりましたが、1909年(明治42年)には無事に建物が完成し、翌年には目録や家具なども納められ、晴れて開館の日を迎えました。
このように、願書提出から7年以上かかってやっと開館した奉納図書館でしたが、1923年(大正12年)の関東大震災により倒壊し、その後再建されることはありませんでした。
無事に残った蔵書は、「遊就館文庫」として保管され、現在は靖國偕行文庫に保存されています。
靖國会館前にも無料休憩所がオープン!
靖國会館前には、以前は2本の桜の木とトイレ、喫煙所がありましたが、2017年(平成29年)に新しく参拝者休憩所がオープンしています。
国産の木材(無垢材)をふんだんに使った、木のぬくもりあふれる、明るく開放的な建物です。
周辺施設と融和する外観や、使い勝手が配慮されているのはもちろん、遊就館竣工当時の植え込み縁石を基壇の周辺石に、30年前に葺き替えられた本殿の屋根の銅板をトイレの換気格子に、そして以前この場所に立っていた桜の木を扁額板にそれぞれ用いるなど、靖国神社の歴史を継承する工夫もされています。
内部にはベンチが並べられ、自動販売機が設置されています。
また、トイレや喫煙所もあります。
遊就館と靖國会館前の広場や休憩所の周りにはベンチがあり、気候が良ければ外で休憩するのもおすすめですが、暑い日、寒い日、雨の日などは、どうぞ、冷暖房完備の新しい休憩所でゆっくりなさってください。